栃木県税理士政治連盟訴訟について

1 「県連会員、政治連盟への自動加入は違憲」

Litigation
税理士会に入っているだけで政治団体「栃木県税理士政治連盟(栃税政)」に加入させられ、憲法で保障された思想・信条の自由を侵害されたとして、宇都宮市の税理士が栃税政を相手取り、会員でないことの確認などを求める訴訟を宇都宮地裁に起こした。平成30年7月18日に第1回口頭弁論が開かれた。訴えたのは、関東信越税理士会栃木県連に所属する秋元照夫税理士(63)。訴状などによると、栃税政は規約で「県連に所属する会員をもって組織する」と定め、秋元氏は入会の意思がないのに会員にさせられた。さらに栃税政は、税理士会が代行して会員から徴収した年1万円の会費を原資に、政党支部や政治家の選挙事務所などに寄付をしており、思想信条の合致しない政党や政治家を支持させられた、としている。
秋元氏や栃税政の上部組織の機関紙などによると、政治連盟に未加入の税理士や会費未納者が増えたことを背景に、2017年4月に栃木や茨城、埼玉など5県で税理士会が政治連盟の会費を徴収する仕組みを導入した。栃税政は税理士会の会員数に応じた分担金を上部組織に納めなければならず、会員に会費納入を勧奨する一方で退会の規定を設けていない。

2 栃木県税政連訴訟 「勝手に入れられた」本人尋問で原告 宇都宮地方裁判所 

税理士会に入っているだけで政治団体「栃木県税理士政治連盟(栃税政)」に加入させられ憲法で保障された思想・信条の自由を侵害されたとして、宇都宮市の税理士が栃税政を相手取り会員でないことの確認などを求めた訴訟の本人尋問が令和元年9月4日、宇都宮地裁(伊良原恵吾裁判長)であり、原告の税理士は「勝手に入れられ納得できなかった。規約上脱退できず、会員であるかを確認する通知書を出しても無視された」と訴えた。訴えたのは、関東信越税理士会栃木県連に所属する秋元照夫税理士(64)。栃税政は規約で「県連に所属する会員をもって組織する」と定めている。税理士は税理士会に入会しなければ業務ができないため、秋元氏は栃税政にも入会の意思がないのに加入させられたとしている。

3 栃木県税理士政治団体強制入会訴訟、損害賠償は棄却

税理士会に入会したら強制的に政治団体「栃木県税理士政治連盟(栃税政)」に加入させられた。宇都宮市の税理士が栃税政に対し、会員でないことの確認などを求めた訴訟の判決が令和2年2月5日、宇都宮地裁であった。会員でないことの確認は昨秋に栃税政が認めたため審理が終了。損害賠償について、伊良原恵吾裁判長は原告の請求を棄却した。
原告は、関東信越税理士会栃木県連に所属する税理士の秋元照夫さん。栃税政は規約で「県連に所属する会員をもって組織する」と定める。秋元さんは同意していないのに会員にさせられたと提訴。①会員でないことの確認、②会費の支払い義務がないことの確認、③会費を政党支部への寄付に使う栃税政の会員として扱われたことで思想・信条の自由を害されたことに対する慰謝料など、110万円の損害賠償の3点を求めた。

4 税理士政治連盟の現状

「全国の税政連を束ねる日本税理士政治連盟(日税政)によると、被告の栃木県税理士政治連盟(栃税政)のように「税理士会員で組織する」と規約を定めて会員を「自動加入」させて入る税政連は、関東信越や東北などの全国15地方ブロックだけみても2009年時点で6団体ある。日本税理士政治連盟(日税政)は、全国15地方ブロックの税政連に対し税理士会員分の会費を上納させており、日税政は会員でなくても税理士会員全員に毎月会報を発行している。このため、各地方ブロックの税政連は会費の収納率が悪くなると、地方税政連の財政が厳しくなっていく現状がある。税理士政治連盟会費が年間12,000円に対し、上納金は年間1,200円である。平均収納率が60%だとすると、約17%が上納金となる。